決済ベンチャーKyashがB2B事業「自社ブランドカード発行」サービス今夏開始 ── カード発行・決済の「一気通貫」で勝負

決済ベンチャーのKyashは4月25日、カード発行から決済処理まで一気通貫で他社に提供可能な独自プラットフォーム「Kyash Direct」を発表。2019年夏の提供開始を予定。
Kyash Directは、主に「独自のカード」や「自社の法人カード」などを発行したい企業に対して提供される法人向け(B2B)のサービスだ。一般的な例だと、自社のブランドカードを発行する場合、カードの発行会社との提携だけではなく、決済システムを提供するシステムベンダーとの契約が別途必要になり、費用がかさむ。しかし、Kyash Directの場合はすべてKyashが提供するため、比較的迅速かつ安価にサービスを提供できるという。
Kyashの現在のコンシューマー向けアプリ画面。新プラットフォーム「Kyash Direct」を通じて提供される際は、細かなUIの調整に留まらず、各機能のON/OFFや導入先のサービスに合った外観の作り込みなど、幅広く対応する見通し。
発行されるカードはVisaプリペイドカードで、国内外5390万カ所のVisa加盟店で利用できる。ほかにもGoogle Payを経由したQUICPay+対応など、Kyashが個人向けバーチャルVisaカードに提供している機能のほとんどを活用できる(送金機能については、今後実装予定)。
Kyashは今まで、個人向けの決済ビジネスを展開してきた。2018年6月にはリアルカードの発行と決済額の2%還元をスタートするなどが話題となった。
これまでは、あくまでも個人向け(BtoC)のみのビジネス展開だったが、今回の発表はKyashが持つ決済基盤を他社に提供するもので、BtoBもしくはBtoBtoCにビジネスを広げるサービスとなる。同社広報は「すでに複数の企業への導入を進めている」と話している。
Visaとの関係強化とプラットフォーム構築の専門家の入社で実現
Kyash Directを提供できるようになった理由はいくつかある。そのうちの大きなものとしては「Visaとのパートナーシップの強化」と「2019年1月付けで椎野孝弘氏がKyashに入社したこと」の2点が挙げられる。
まず、Visaとの関係強化については、同社がVisaのバーチャルカードを発行していることから明らかなように、両社はもともと深い関係にあるが、今回の発表はこれまでの関係を大きく変えるものと言っていい。
それは、Visaがグローバルで用意しているベンチャー企業向け支援プログラム「FinTechファストトラックプログラム」に、Kyashが選ばれたためだ。
Kyashは今まで、決済システム自体は完全独自で実装し、Visaとの接続も自社で行ってきた。また、カードの発行は、すみしんライフカード社と提携して行ってきた。
しかし、今回FinTechファストトラックプログラムに選ばれたことで、Kyashはカードの発行から決済まですべてのプロセスを自社主導で行えるようになった。この結果、Kyash Directの提供が可能になったのだ。